来年モデルのZ1のプロトタイプが届いた。
手足が長く見えるカットと、
腰、膝をカッティングとステッチでサポートし、
ひねる、曲げるなどの動作を容易にする私の提案。
それをウエットスーツ界の権威、
石井浩一博士が、
練りに練って具現化した究極になるであろうサーフスーツ。
そしてNationハイパーソニック。
50歳になる私にとって、
ショートボードに乗るチャンスがこのモデル。
こちらもNATIONのサーフボード博士にありがとう!
「風波がまとまる」
天気図とか夕方の海から想像すると、
胸、もしかしたら頭くらいになるかも?
そん自己予想をしていたせいもあり、
全く眠れないほど興奮してしまった。
で、朝になるのを待てずに波チェックすると、
暗いからよくわからないが、
「もしかすると頭くらいあるかも」
そんな海面の表情だった。
天候は曇、時折小雨、気温7度。
水温は15度程度だろうか。
このスーツは3/3mmなので、
「この時期の千葉北は5mmないと…..」
みんなそう言うが、現場で試してみたかったので、
あえてインナースーツを着用せずにサーフしてみることに。
さらには部屋でワックスアップも全て行った。
準備万端。
このハイパーソニックのフォルム、かなり好きです。
一見するとランボルギーニのようで、そんなところも愛しております。
既存のたぷついたネックエントリーの、
たるみゆるみを50%排除したデザイン。
石井博士は、
「きっと脱げなくなるけどいいかな?」
そう言っていたが、
結果は脱ぐのも何も問題ありませんでした。
さらに腹部を実寸より5cmも狭くして、
おなかのたわつき(実際に太って見えるのはこのせい)が現れづらくした。
これも博士は、
「きっとサーフ中に苦しいでしょう」
そういう喧伝(ふれこみ)だったが、
結果「全く何も気にならなかった」。
机上論よりフィールド論。
そういうことを提案し、
確認するのも私たちの仕事でもあります。
さらにはネックエントリーの上半身をきつくした新しい長所は、
トルネード生地と肌の密着度が高く、
よって空気も入りづらく、やたらと暖かいこと。
なので、3mmのジャージで全く問題なく、
知り合いからは「寒くないの?」
何度もそう聞かれるほど、
薄そうなウエットに見えていたのもうれしい。
こちらも結果は、この季節に2時間も全く寒くならず、
終了後は、道路上で雨の中で着替えたが、
体から湯気が立ちのぼるほど温まっており、
上半身裸で5分ほど歩き回り、こちらも
「寒くないのか?」
そう聞かれる始末でありました。
All surf photo by @tunatunatantei
ひさしぶりの波らしい波。
小波であれだけ速かったハイパーソニック。
ピークの中に中に入りこみ、
その芯をボードを沈めて引き絞るように待ち、
一気にパドリングを高出力にすると、
まるでカタパルトが付いた戦闘機の離陸にも感じた。
大げさか。
でも戦闘機に乗ったことがないから、
そういった感覚なのは間違いなかった。
いつものターン。
これは今朝のインスタグラムにも書いたが、
私がこういう波で、
最もサーフィングの楽しさを感じられるターンなのであります。
体の芯にフルパワーを与え、
全身を的確に、そして瞬時に動かす指令を司どる自分。
こうして自分の筋力、骨格も含めて、
現在の身体能力では、完璧なターンができた歓び。
ニコニコ笑わないけど、
こうした確かなハッピーサーフィングもあります。
波の上に上がらないリエントリー。
泡境にボードを沿わせるのは、
1秒が30秒にも感じられるほどの印象がある。
感覚は大波のフロントサイドボトムターンであります。
戦わない戦闘機のパイロット気分で上がってくるのはひさしぶりであり、
そう考えると、このシャープさと、
加速レスポンスが自分に強い印象を与えたのだろう。
少年時代に生まれてはじめて速いバイクに乗った感覚が蘇った。
サーフィングはこれだからやめられない。
そんな気分の飛行・中年時間でありました。
それにしてもこのボード。
突出したフォルムやデザインが、
まとまって熟成されていることに驚かされた。
リニアリティー、またはソアリング・ナイフ。
そんな言葉を浮かべながら松林のあいだを歩く。
ノースタイガーから車で7分の弊社ショールームに戻ると、
突然D先輩が来られた。
「ハイパーなんたら気になってきたぜ」
「ヤバイです。先輩が乗ったら、飛び過ぎて日付変更線は超えますねきっと」
「何わからないことを言っているんだよ」
「これね、なんだかさ、ランボルみたいだな」
「本当ですよね。この角度からだとそう見えます」
「ウエット新しくしたんだって?」
「はい、手足が長く見えます。はい(そう言ってカメラのプレビューをお見せする)」
「ふーん」
「あ、波乗りもあります。このターンが今日一番の大物です」
「お前ね、いつもこればっかりじゃないか」
「でもこれが好きなんですよ」
「ショートなんだからショートみたいに乗れよな」
「わかりました!」
「飯行く?うまいソバ屋があるんだよ」
「聞きました。国道沿いのですか?」
「おうよ。よくさ、蕎麦屋は山に良いのがあるというけど、
今回は海沿いのあそこが勝ちだな。俺は山によく入っているからわかるけど、
あんなうめえソバ屋は初めてだ。十割をあれだけおいしくできるのは天才だな」
「早く食べたいです」
(そう言って先輩の社用車で、ショールームから5分ほど国道を南に走らせた)
「そこだそこだ右側の」
「わくわくします」
「あ….、準備中だって。俺たち遅かったんだな(午後3時)」
「気持ちが100%蕎麦に向かっていたので、残念です」
「だから十割蕎麦って言うんだよ」
「わかりました!(わからなかったが)」
「ま、ガストでいいな」
「最高です」
そうやっておいしい食事に舌鼓を打つ先輩後輩。
「あのよ、さっきのターンだけどな」
「はい?」
「あれよ、お前がよくやるスラッシュだよ。あれさ、俺の真似したべ」
「はい、18歳のときにあれを見た衝撃がいまだに」
「そりゃそれでいいんだけどよ、同じことばっかりやるなよ」
「それさっきも聞きました」
「違うよ。さっきは言い足りなかったの。
お前もプロなんだからバリエーションを持ちなさい、と思ったんだよ」
「ありがとうございます。けれど、あのターンおもしろいんですよ」
「どこがだよ。グシャってやるだけじゃねえか」
「そうなんですけど、そのグシャの後がじつは最高なんですよ」
「グシャの後は泡じゃねえか」
「違うんですよ。斜めにポケットの奧に滑っていけるんです。
ボトムにクリッピングポイントを設置して、そこに向かって過重していくんです。
泡の境界を凝視しつつターンを左から右に入れ替えていくのは宇宙的です」
「何かまたわからないことを言い始めたね。そんな時間ないってあの位置は。
それにGがかかっているからそんなことしたら膝が折れちまうぜ」
「そうなんですけど、ラウンドハウスの位置でやるとそれができることを会得しました」
「あのトロアツのサンオノフレでか」
「そうなんです。あ、カメラ持ってますのでお見せします」
「291(憎い)ねキミは」
「あ、人を羨んではいけないと教えてくれたじゃないですか?」
「あのさ、中年も後半になってくると、自分に正直になってくるんだよ」
「そうなんですか?」(笑)
□
私はショールームに戻り、先輩は波乗りに向かわれた。
すると、
土佐文旦というそれは甘く、
大きく、水水しく、太陽のような色の大きな果実が宅急便で届いた。
私たちスタッフ宛であり、差出人は高知県のベンチュラセイジ!?
そういえばセイジの生家は、
四国土佐で「森本果樹園」を営まれていたことを思い出した。
http://morimotokajuen.com/buntan/index.html
こんな日は、
海から上がっても違う種類の新たな感動があり、
それはライフスタイルをも司るものになる。
こうしてこの美しい文旦は、
仁淀川の水をたっぷりと吸い上げ、
土佐の坂本龍馬も浴びたであろう太陽と、
風を口いっぱいにいただくのも宇宙的でありました。
ありがとうございました!
ハッピーサーフィン、続けていきます。
Keep on the Happy Surfing!!
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